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父の仕事遍歴 -アルゼンチン債のデフォルトから-

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父親が早期退職し、退職金をアルゼンチン債で飛ばす...

「実家の資金難、父親の仕事問題で悩んだことはありませんか。」なんて定型文で始まるようなさらっとした話でもない、家族は本当に絶望し落ち込んだ。

父親が会社にはめられて退職金を0にされそうになったり、裁判するぞと書面をだしてやっと手に入れた退職金を、野村證券に預けた挙げ句、アルゼンチン債がデフォルトになり、一旦は「諦めてください」という状態に。

父は、アルバイトに行ったものの…さてどうなったのか。

無くなった父の退職金

投資は余裕資金で行えとよく言うが、父は何を思ったのか、退職金を使ってリスクの高いアルゼンチン債を買っていた。昔、郵便局の定額をすすめてくれたあの父が。

買う方にももちろん問題はあるけれど、資金の性質を聞いていない野村證券にも落ち度はあると思う。

何はともあれ、退職金が飛んだ。家族の絶望と言ったらない。特に母は、今まで口を出さずに子育て、パートに勤しんでいたので無理もない。

心配した従姉妹が、父の資格を生かした仕事を見つけてきてくれた。

某有名専門学校の資格取得講座の講師だ。(ちなみにそれとは別に、夜間の高速道路に凍結を防ぐ塩を撒くという仕事もしていた...)

ちょっと大きな借金を背負ったくらいの勢いだった。

講師の仕事を人間関係でもめて辞める

数年は、講師業をやっていたと思う。しかし、ある日突然、専門学校の関係者と揉めて辞めてきたと告げられた。

年齢的にも性格的にも、新しい人間関係でうまくやって行くのが困難だったのだろう。母と違って父は、人と交流したり長くうまくやって行くのが苦手のようだった。友達も少ないし、いる友達はめっちゃいい人ばかり。かなり、父を多めに見てくれているのだろう。

とにかくメインの仕事は無くなった。

会社をやるというので止める

しばらくして父から連絡があり「会社をやろうかと思う」と告げられた。その時の恐怖たるや!

今でも覚えている、東梅田からちょっと歩いた小さな事務所から出て、小声なのに激しく「何を考えているの!!」といい放った時のことを。

亭主関白で俺様な父に怒鳴ったのは、これが初めてではなかろうか。

会社なんかやって、大きな借金でも背負ったら返せるあてがない。私は年収750万くらいの仕事を辞めて、新しく手に職をつけ始めたばかりだったのだ。

辞めなければよかったか...

リスクの確認をしてGOを出す

また連絡があったので、詳細を聞いた。

まずは仕事の内容について。これは、以前やっていたと講師業だった。ノウハウはわかったので同じ事をオリジナルでやるというのだ。(倫理的にどーなの?)そんな無茶苦茶な話ではなさそうだ。

次に、リスクの確認。いくら初期費用がかかって、ランニングコストはいくらで、収益予想はどれくらいかを聞いてみた。やる気満々だったようで、どれも口頭で答えていた。金額はどれも微々たるもの、手に終えそうな雰囲気。

最後に、現在の準備計画についても聞いてみた。広告宣伝、生徒募集、規模など、どうするのか。チラシ配布の際のコスト、お願いする人材、配布場所に至るまで全て計画済み。年間100人くらいまでは面倒を見れると言う。東京、名古屋、大阪で講習を行い、あとは通信でも指導を予定していた。会場の目処もつけていた。

うーん、申し分ない。父よ、なんでアルゼンチン債なんか買ったねん。。。

最後に火の粉が飛んできた。Web修行中の私に、ホームページを作って欲しいと。

 

やらないわけにはいかないよね。。

ホームページ作成へ

当時習ったホームページの作成方法は、今のCSSレイアウトではなく、テーブル組みのものだった。

それでも、スケッチブックにロゴを書いてみたり、Fireworksでデザインを起こしたりしてみた。今となってはダサい、習ったばかりのエフェクト使ったりして。フォームのcgiは同僚に15,000円でつけてもらった。

ふふふできたぜ。父は、デザインに関して文句を言わないクライアントだった。そして、商売気のないクライアントでもあった。Twitterや、合格者の声、合格率の掲載なんてもっての他。と怒られた(なぜ...)。団塊の世代で職人気質だからだろうという勝手な分析。

しかしながら後でわかるが、それはもう大手にはない丁寧なアナログ対応、気になったら直ぐに電話するというスタイルで、中年受講者には感謝されているらしい。

勝手にプロバイダを変えてサイトが飛ぶ

悪気がないと言えばそれまでだけど。実家に「光ケーブル」系の営業がきて、「早い」「安い」みたいなことを言ったみたいだ。

何の気なしに現在のプロバイダを解約して、光ケーブルが導入された。そのプロバイダには会社のサイトが上がっていたんだ。

アクセスができないという父からの問い合わせで発覚したと思う。順位もよく、生徒さんからのアクセスも多かったというのに。

これもまた仕事中に怒りまくった記憶が。。なんか怒鳴るの慣れてきた気がする。何も知らない父はちょっとかわいそうだったかな。

とにかく、サイトを復活させなければならなかった。

現役の76歳

さて、紆余曲折あった父の会社、旧型ホームページも、たいしたテコ入れをされることなく10年が経過した。サイトを復活させて10年なので、もっと古いのかな。

いまではこんな旧型サイト、恥ずかしいかぎりなんだけれど。
年間に50人くらいが限界という中で、あまり集客できてもしょうがないというのでそのままに。

大儲けはできないけれど、ボケ防止と暇つぶしと小銭稼ぎで、ちょうどいい感じになっているのではなかろうか。

1年に10万円くらいは利益あるのか。あったとして10年で100万円。スタート時はもっと激しくやっていたから、トータル200万円くらいにはなったのか。

 

デフォルトがなかったら発生しなかった作業や仕事。

あのお金は取り戻せないけど、やっぱり今でもくやしいけど、何かしらちょっとやってやったぞという満足感。

志しが低いなぁと思うけど、76歳までぼちぼちやってきた、すごいんじゃなかろうか。

父はワード入力もうまくなったし、そのおかげでネットでコミュニケーション取れるし。

節約を余儀なくされた母も悔しいだろうけど、おそらく性分だからまだ働いている72才。

 

いつまで続くのか、続いて欲しいし、楽して欲しいし、難しいから。私が何か一発逆転満塁サヨナラでFXでも...

しないしない。絶対そういうのは遺伝してるからな。博打はしないんだ。

コツコツブログ書くよ、まってろよ。

急にアルバイトを探し始めた76歳

ある正月に実家に帰ってみると、76歳の父がアルバイトを探しているという。

もちろん経済的には年金を足してもぎりぎりの状態で、裕福ではないけれど、ここから働きに出なければならないほどではないはず。

サイトから20人弱くらいの生徒さんからは申込がきているし。これはどういうことだろうか。

聞くと「気分転換」とだけ答えた。何が何でもアルバイトをしたいようだ。

・・・

親子なので何となくわかるが、ここまで来たら意地もあると思う。
自分に自信がありすぎる人なので、落ちるのがくやしくて。仕事に対する責任とかもうどうでもよくて、受かりさえすれば満足いく感じ。

「もう年齢詐称しかないですよ」というアドバイスをしたものもいた。
本人は大喜びで「60代に見える自信はある」と笑っていた。
私も母も危ない橋はわたって欲しくなかった。

誰かを乗せて運転する仕事とか・・

 

まさかのアルバイトが決まる 

そうこう言っているうちに、父から「スマホを持ちたい」という相談を受けた。
なんでこんな遠隔地に住んでいる娘に聞くのか!

聞けば、仕事で必要という。そうだ、アルバイトに受かっていたのだ。

ここでアルバイトというのは語弊があるのかもしれない。アルバイトかもしれないけど、一応建築現場の施工管理士として入るからだ。

2018年10月の資料を引用すると、「人手不足が深刻な5つの業界」に「建築業」も入っている。

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76歳と言えど、経験者は重宝されるようだ。一応現役で施工管理士の記述問題を見ているのでそのあたりの勘もキープできているのかもしれない。

もうすぐ現場に出る。新しい格安携帯を持って。
聞けば、社長も現場関係者も、昔の学校の先輩後輩にあたるという。こんな縁もあるもんだな。

面接で落ち続け、落ち続け、諦めなかった父に、賛辞を送りたい。
そして、「なんで今ごろこんなに躍起になって」とぼやいてた母にも、お疲れと言いたい。どちらも気持ちもわかる。

彼の人生はまた新しく始まった。もうアルゼンチン債の穴埋めは終わっているのかもしない。